カンバンとガントチャートの使い分け — 答えたい問いで選ぶ
チームのタスク管理を始めるとき、あるいは今のやり方を見直すときに、たいてい出てくる問いがあります。
- カンバンボードとガントチャート、どちらで管理すればいいのか
- 両方使えるツールを選んだのに、結局どちらかしか開いていない
- 人によって見ている画面(ビュー)が違い、進捗の話がかみ合わない
先に結論を書きます。この二つは、どちらかを選ぶものではありません。答える問いが違うだけです。そして最初に決めるべきなのは、どちらのビューを使うかではなく、タスクに何を入力しておくかのほうです。
カンバンとガントチャートは、答える問いが違う
- カンバンボードは「いま何が止まっているか」に答える
- ガントチャートは「この順番で間に合うか」に答える
「どちらが優れているか」という比べ方をすると答えが出ないのは、そもそも別の問いに答える道具だからです。
カンバンボードが答えるのは「いま何が止まっているか」
カンバンボードは、タスクをカードにして「未着手」「作業中」「完了」のような列に並べ、進むたびにカードを右へ動かしていく形式です。
カンバンの考え方をまとめたオープン版カンバンガイドは、カンバンを「あるシステムを通じて価値のフローを最適化するための戦略」と定義しています。仕事を一つずつ仕上げて流していく、その流れそのものを整えるための考え方だ、ということです。
流れを見るときに軸になるのがWIP(Work In Progress/仕掛かり作業)です。同ガイドはWIPを「開始しているが終了していない作業」と定義しています。作業中の列にカードが10枚並んでいるなら、そのチームは10件を同時に抱えていることになります(どこからを「開始」と数えるかはチームで決めます)。
抱えている数が増えるほど、一件あたりは進みません。手をつけたものが終わらないまま次に着手すると、どれも中途半端なまま並びます。そこで、作業中の列に置けるカードの枚数に上限を決めておくやり方があります。WIP制限と呼ばれるもので、同ガイドもワークフローの定義に「WIPを制御する方法」を含めています。
同ガイドは、流れを見るための指標も挙げています。単位時間あたりに完了した作業項目の数(スループット)や、作業項目が開始してからの経過時間などです。「このカードは何日、作業中の列に置かれたままか」を見れば、報告を待たずに滞りが分かります。
つまりカンバンが得意なのは、いま起きている滞りに気づくことです。次のような仕事に向いています。
- 依頼が随時入ってくる運用・保守・問い合わせ対応
- 期日よりも「流れを止めないこと」が大事な継続業務
- 朝会で、止まっているものを一つずつ拾っていきたいとき
逆に苦手なのは、先の見通しです。カードがいまどの列にあるかは分かりますが、来月末までに終わるかどうかは、ボードを眺めても出てきません。
ガントチャートが答えるのは「この順番で間に合うか」
ガントチャートは、横軸に時間、縦軸にタスクを置き、それぞれの期間を横棒の帯で表した図です。カンバンが「いまの状態」を映すのに対して、こちらはタスクを時間の上に並べます。そのため見えるものが変わります。
- どのタスクとどのタスクが同じ週に重なっているか
- ある作業が終わらないと次に進めない、という前後関係
- 全体の終わりが、いつごろになりそうか
とくに重要なのが、遅れがそのまま全体に響く一連の作業です。開始から完了までをつなぐ経路のうち、所要時間がもっとも長いものをクリティカルパスと呼びます。ここに乗った作業が1日遅れると、原則として全体の完了も1日遅れます。裏を返せば、乗っていない作業は、余裕(フロート)の範囲内なら遅れても全体には響きません。どこを死守すべきかが分かる、ということです。
反対に、こういう進めかたをする仕事では手放せません。
- 納期や公開日が先に決まっている案件
- 設計から実装、検証へと前後関係がある作業
- 複数の担当者の作業時期が重なる進行
その代わり、今日の朝に何が止まったかは、帯を見ても分かりません。
どちらが要るかは、三つの質問で切り分ける
自分のチームがどちらを必要としているかは、次の三つで判断できます。
- 期日が先に決まっているか。 決まっているならガントチャート、そうでなければカンバンボード
- 仕事は計画して作るか、随時入ってくるか。 計画して作るならガントチャート、入ってくるならカンバンボード
- 誰に見せるか。 チームの中で毎日見るならカンバンボード、外の関係者に進行を説明するならガントチャート
二つの違いをまとめると、次のようになります。
| 見るポイント | カンバンボード | ガントチャート |
|---|---|---|
| 答える問い | いま何が止まっているか | この順番で間に合うか |
| 時間の扱い | 現在の状態だけ | 過去から未来まで |
| 向く仕事 | 随時発生する運用・保守 | 期日が決まった案件 |
| 必要な入力 | ステータス | 開始日と期限 |
| 苦手なこと | 先の見通し | 日々の状態変化 |
多くのチームは、この三つ(期日・仕事の入りかた・見せる相手)の答えが混ざります。運用の問い合わせを受けながら、期日のある案件も抱えている状態です。「どちらかに決まらない」と感じるのは、たいていこれが理由なので、無理に一つへ寄せる必要はありません。
両方使うなら、先に決めるのは「埋める項目」
同じタスクを二つの見え方で扱うというのは、一つのデータを二通りに描くということです。だから、それぞれの見え方をつくるのに必要な項目が入っていなければ、ビューを切り替えても何も出てきません。必要な項目ははっきりしています。
- カンバンボードに必要なのはステータスです。これが空だと、すべてのカードが同じ列に積まれます
- ガントチャートに必要なのは開始日と期限です。どちらかが欠けると、期間を持った帯としては描けません
つまり両方を使うチームがそろえるべきなのは、タスクを作る時点で「ステータス・開始日・期限」を埋める、という約束です。そろえる項目は、これだけで足ります。
よくあるつまずきは、ツールを導入してビューを開き、空のボードや歯抜けのガントチャートを見て「うちには合わなかった」と結論づけることです。合わないのではなく、材料が入っていないだけ、という場合が少なくありません。
あとは、この約束が守られる形にしておくだけです。ガントチャートも開くプロジェクトでは、次の四つを決めておくと楽になります。
- タスクを作った人が、その場でステータスと期限まで入れる
- 期限が決まらないタスクにも仮の期限を置き、空欄のままにしない
- 週に一度、期限が過ぎたタスクを見て、動かすか閉じるかを決める
- 朝会ではカンバンボード、週次や月次の報告ではガントチャートと、開く場面を先に決めておく
人によって開く画面が違うと、同じタスクを指していても話がかみ合いません。どの場面で何を見るかまで決めて、はじめて二つのビューがそろいます。
すべてのタスクにガントチャートは要らない
一方で、すべてのプロジェクトでここまでやる必要はありません。社内のこまごまとした作業まで開始日を入れるのは、手間が見通しに見合わないからです。
現実的なのは、プロジェクト単位で分けることです。納期のある案件のプロジェクトではガントチャートを使い、運用や問い合わせを受けるプロジェクトはカンバンボードだけで回す、という分け方です。同じチームでも、扱う仕事の性質で分ければ、入力の負担は必要なところにだけかかります。
タスクマンで両方を回すときの最小構成
タスクマンは、同じタスクをリスト・カンバン・カレンダー・ガントの4つの表示モードで見られるクラウド型のタスク管理ツールです。ビューごとにデータを作り直す必要はありません。
ステータス・開始日・期限の三つは、タスクマンではこう扱います。
- プロジェクトを作成すると、ステータス(TODO / DOING / DONE)と優先度(高 / 中 / 低)のフィールドが自動で作られます。カンバンボードはこのステータスで列を分けられるほか、担当者別に分けることもできます
- タスクに開始日と期限を入れると、ガントチャートにその期間の帯が並びます
- カードをドラッグしてステータスを変えると、リストで同じタスクを開いても変更が反映されています。ビューごとに更新して回る必要はありません
プロジェクトごとに管理項目を足したいときは、カスタムフィールドを使います。テキスト・数値・日付・真偽値・単一選択・複数選択の型があり、選択肢には色を付けられます。たとえば「フェーズ」を単一選択で作れば、ステータスとは別の切り口をタスクに持たせられます。カスタムフィールドの値でフィルタリングやソートができるので、「フェーズが検証中のタスクだけを見る」といった絞り込みも可能です。
補足しておくと、タスクマンのガントチャートは、開始日と期限から各タスクの帯を時系列に並べるものです。前後関係は、先の作業の期限と次の作業の開始日をどう置くかで表します。
目的に近づいているかは、KGI/KPIで見る
止まっていないか、間に合うか。その先に「その作業は目的に近づいているのか」という問いが残ります。タスクマンではプロジェクトにKGI(重要目標)を1つ置き、その下にKPI(主要業績指標)をぶら下げてタスクを紐づけると、完了タスク数と総タスク数から進捗が自動で追跡されます。KPI間にウェイトを設定すれば加重平均になります。ボードは流れていて納期にも間に合っているのに成果につながらない、という状態に気づくための仕組みです。
まとめ
- カンバンボードは「いま何が止まっているか」、ガントチャートは「この順番で間に合うか」に答えます。答える問いが違うだけで、どちらかを選ぶものではありません
- 迷ったら「期日が先に決まっているか」から切り分けます。決まっているならガントチャート、随時入ってくる仕事ならカンバンボードです
- 両方を使うなら、先に決めるのはビューではなく埋める項目です。ステータス・開始日・期限が入っていれば、同じタスクを二通りに見られます
- すべてのタスクに日付を入れる必要はありません。プロジェクト単位で使い分ければ、入力の負担は必要なところにだけかかります
まずは手元のプロジェクトを一つ選び、タスクにステータスと期限が入っているかを見るところから始めてみてください。それだけで、開けるビューが増えます。
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