エクセルのタスク管理の限界。移行を決める3つの基準
エクセルでタスクを管理していると、ある時期から表を開くのが億劫になってきます。行が増え、色が増え、誰かが直したはずの欄が古いまま残る。そろそろツールに移すべきなのか、それともまだエクセルで足りるのか。判断がつかないまま、とりあえず今週も同じ表を更新している。そんな状態から抜け出すための記事です。
先に結論を書きます。移るかどうかを決める材料は、行の数でも、共有のしやすさでもありません。この2つはよく理由に挙げられますが、どちらも実際にはほとんど決め手になりません。
エクセルの限界は「共有できない」ことではありません
まず、よく言われる2つの理由を外しておきます。ここを勘違いしたまま検討を始めると、社内を説得する材料としても弱くなります。
1つめは、複数人で同時に編集できないという話です。 これは条件つきで可能です。Microsoftの公式ドキュメントによると、共同編集に対応しているのはファイル形式が .xlsx / .xlsm / .xlsb で、保存場所が OneDrive、OneDrive for Business、SharePoint Online のいずれか、そして最新版のデスクトップ版 Excel に Microsoft 365 アカウントでサインインしているか、ブラウザ版の Excel を使っている場合です。デスクトップ版で共同編集するには Microsoft 365 のサブスクリプションが要りますが、ブラウザ版やスマートフォンのアプリ版なら、その条件は付きません。逆に、社内サーバーに置いた SharePoint(オンプレミス)や、ファイルサーバー上の共有フォルダに置いたファイルは対象外になります。
つまり「エクセルだから同時に編集できない」のではなく、置き場所とファイル形式の問題です。共有フォルダに置いた .xls ファイルを開き合って「編集のためロックされています」と出ているなら、置き場所と形式を変えるだけで解決できる可能性があります。
2つめは、データが増えると限界が来るという話です。 まず容量から見ると、ワークシートの上限は1,048,576行×16,384列です。タスク管理で100万行に到達するチームは、まずありません。数百行で重く感じるとしたら、疑うのは行数より、条件付き書式や数式の量です。
この2つを外すと、本当の分かれ目が見えてきます。
限界は、同じ表に別々の見かたを求められたときに来ます
表は、1つの形しか持てません。行と列に並んだ姿がすべてで、同じデータを別の形で見せることはできません。ここがエクセルでタスクを管理するときの、いちばん構造的な制約です。
同じタスクの一覧を、リーダーは期限順に見たいと考えます。担当者は自分の担当分だけを見たい。会議では進捗の高い順、あるいはプロジェクト別にまとめたものが要る。
自分だけの並べ替えやフィルタなら、エクセルでも持てます。OneDrive か SharePoint Online に置いたファイルを Excel for Microsoft 365 または Excel 2021 以降で開くと、シートビューという機能で、ほかの人の画面を動かさずに並べ替え・絞り込み・列や行の非表示ができます。
ただし、ここで手に入るのは同じ表を並べ替えたり、一部を隠したりした姿までです。カレンダーの上に置く、期間を帯で見る、といった別の形にはなりません。会議用に進捗率を足した一覧を作り直す作業も、そのまま残ります。
もう1つ、デスクトップ版のExcelでシートビューを使って保存すると、並べ替えとフィルタは全員の既定のビューにも現れます。自分の画面だけで完結させたい場合は、この点に注意が要ります。
そこで多くのチームが取る対処が、シートの複製です。「会議用」「担当者別」「今週分」とシートが増えていきます。ここから、いちばん困る状態が始まります。どのシートが最新なのかが分からなくなるのです。元の表を直しても複製には反映されず、複製を直した人は元の表を直し忘れます。
行が増えたことより、同じ情報のコピーが増えたことのほうが、実務では先に効いてきます。
もう1つの分かれ目は、列に入る値がそろわなくなったときです
表は、セルに何を入れるかを強制しません。自由に書けることがエクセルの良さですが、複数人で使うと、これが裏目に出ます。
進捗の列を見ると、「完了」「済」「done」「◯」「100%」が混ざっている。担当者の列に「田中」と「田中さん」と「田中(営業)」がある。日付の列に「8/20」という文字列と、日付として入力された値が混ざっている。
この状態になると、集計が合わなくなります。COUNTIF(条件に合うセルを数える関数)で「完了」を数えても「済」は拾えません。気づいた人が手で直し、しばらくするとまた混ざる。表そのものは壊れていないので、間違いに気づくのは集計した数字を誰かが疑ったときです。
入力のゆれは、注意して防ぐものではなく、選択肢しか入らない形にして防ぐものです。エクセルでも入力規則(セルに入れられる値をリストから選ばせる設定)で選択肢を設定できますが、行を追加したときに規則の範囲から外れる、コピー&ペーストで規則ごと上書きされる、といった形でほどけていきます。
移るかどうかは、この3つで決められます
ここまでを、判断できる形にまとめます。次の3つのうち2つ以上が当てはまるなら、ツールへの移行を検討する段階です。
- 同じ表を、2通り以上の見かたで見たい人がいる。 すでにシートを複製している、あるいは「会議用に作り直す」作業が発生している
- 集計をやり直す手作業が、定期的に発生している。 表記のゆれを直す、別シートに転記する、報告用に数字を作り直す
- 更新する人が2人以上いて、いつ更新するかが決まっていない。 結果として、聞かないと本当の進捗が分からない
逆に、1人で管理していて、見かたが1通りで、集計を人に見せる必要がないなら、エクセルのままで困りません。この場合に移行しても、入力の手間が増えるだけになります。
移すときは、列を1つずつ対応づけます
移行でつまずくのは、表をそのまま持っていこうとするときです。列を1つずつ、ツール側の何に当たるかを決めていくと、迷いが減ります。
| エクセルの列 | ツール側で受けるもの |
|---|---|
| タスク名 | タスクのタイトル |
| 担当 | 担当者(メンバーから選ぶ) |
| 開始日 / 期限 | 開始日・期限の日付 |
| ステータス | 選択肢のフィールド(例: TODO / DOING / DONE) |
| 優先度 | 選択肢のフィールド(例: 高 / 中 / 低) |
| 工数、部署、請求番号などの独自の列 | カスタムフィールド(自分で追加する管理項目。テキスト / 数値 / 日付など) |
| 進捗率の集計欄 | KPIに紐づけて完了タスク数から自動で出す |
| ガント用の帯 | ガントチャート表示 |
そして、持っていかない列を決めておきます。
- 数式の列(残日数、進捗率)。ツール側が自動で出すか、そもそも要らなくなることが多い
- 色分けの凡例。色は選択肢の設定に置き換わります
- 複製したシート。表示の切り替えで済むので、移行の対象は元の表1枚だけです
この作業をすると、今は誰も見ていない列が見つかることがあります。過去に必要だったが、いつのまにか更新されなくなった列です。移行は、それを落とす機会でもあります。
なお、最初から全部を入れ直す必要はありません。終わったタスクは元の表を残しておけば足りるので、移すのはいま動いているものだけで済みます。
移したあとに決めるのは、最初に開く画面です
ツールに移すと、同じタスクをリスト、カンバン、カレンダー、ガントといった複数の形で見られるようになります。ここで「全部使おう」とすると、結局どれも中途半端になります。
チームが最初に開く画面を1つ決めて、残りは必要な人が切り替える、という運用にすると定着しやすくなります。どの表示をふだん使いにするかは、チームが何を知りたいかで決まります。カンバンとガントの使い分けについては、カンバンとガントチャートの使い分け — 答えたい問いで選ぶで詳しく書いています。
タスクマンで移行する場合
タスクマンは、プロジェクトごとにカスタムフィールドを追加できるタスク管理ツールです。エクセルの表を持ち込むときに、ここが役に立ちます。表の独自の列(工数、部署、請求番号など)を、テキスト・数値・日付・真偽値・単一選択・複数選択の型から選んで、そのまま管理項目として持ち込めるためです。選択肢には色を設定でき、その値でフィルタや並べ替えもできます。
プロジェクトを作成すると、ステータス(TODO / DOING / DONE)と優先度(高 / 中 / 低)のフィールドが自動で用意されます。表示はリスト・カンバン・カレンダー・ガントの4つを切り替えられます。進捗を数字で追いたい場合は、プロジェクトにKGI(最終的に達成したい目標)を1つ置き、その下のKPI(途中経過をはかる指標)にタスクを紐づけます。完了タスク数と総タスク数から、進捗が自動で計算されます。
更新する人が2人以上いるチーム(先ほどの3つめ)なら、招待リンクを共有してメンバーを追加します。権限はオーナー・メンバー・閲覧のみの3つから選べるので、見るだけの人を分けておけます。無料プランがあり、プロジェクト数とメンバー数に上限があります。上限を超える規模なら、有料プランもあります。
まとめ
- エクセルの限界は、行数でも共有のしにくさでもありません。共同編集は保存場所とファイル形式の条件を満たせば可能で、行の上限は104万行です
- 実際の分かれ目は、同じ表に別々の見かたが必要になったときと、列に入る値がそろわなくなったときの2つです。シートビューで自分だけの並べ替えはできますが、カレンダーやガントのような別の形にはなりません
- 移行を検討する目安は3つ。複数の見かたで見たい人がいる/集計の手作業が定期的に発生している/更新する人が2人以上いてタイミングが決まっていない。2つ以上当てはまるなら検討時期です
- 移すときは表ごと運ばず、列を1つずつ対応づけます。数式の列・色の凡例・複製シートは持っていきません